INPACT 岡本和彦の名言

岡本和彦の名言

岡本和彦

慶應義塾大学法学部卒業、スタンフォード大学ビジネススクールでMBAを取得。松下電器産業(のちのパナソニック)、バング・アンド・オルフセン・ジャパン社長CEO(最高経営責任者)、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルなどを経てビザ・ワールドワイド・ジャパン日本次席代表、社長、会長。

Kazuhiko Okamoto

岡本和彦

日本の経営者。「ビザ・ワールドワイド・ジャパン」会長。

岡本和彦の名言

中小企業経営者のマインド。照明代、空調代、水道代など、会社のコストを「自分のカネ」の感覚で管理し、ムダと感じたらすぐに改善する。経営に携わる者がこういうマインドを持つことは非常に重要。

どんな会社も、経営活動を通じて価値を提供するには確固とした理念が必要。理念があることで、社員は日々仕事をするうえでの安心感、よりどころが得られるからです。もちろん、どんなに崇高な理念を掲げても、絵に描いた餅では意味がありません。

常に極めることを心がけていればいいかというと、そうとも言えません。例えば蒸気機関車の技術をどんなに極めたとしても、それを画期的に上回る移動手段として電車や自動車が出てきた時には負けが確定したはずです。極めるのか、それとも諦めるのか。時代の流れを見極めながら、そこを見抜くことが重要です。

(松下)幸之助が残した言葉は多くありますが、中でも私が一番好きなのは「社員稼業」です。自分の職務について「社長」のような自覚を持って創意工夫を凝らし、上司や同僚、後輩など周囲の人々を「お得意様」と見なして意見を聞く。自分なりに仕事を楽しみ、高めていく心構えを指す言葉です。

アメックスにいてやや反発を感じたのは、経営判断が短期的視野に基づくこと。中期計画より年間計画が優先され、四半期で成果を出すことが求められました。その影響を最も受けたのが投資。目先の収益を確保するため、しばしば凍結の判断に傾いていました。ウォール街を気にしすぎる米企業の弊害を感じました。

アメックスには「ブルーボックスバリュー」と呼ばれる理念が浸透していました。アメックスでは「Principle Based Decision Making(理念に基づいた意思決定)」と言って、意思決定の際に必ず理念に照らし「合っているのか」「矛盾はないか」と問うことが習慣づけられていました。経営活動の中に理念を織り込み、実現に向けて邁進していたのです。

バング・アンド・オルフセン日本法人社長時代に感じたのは、欧米人と日本人とが製品に求める「クオリティー」の違いです。日本人が考えるクオリティーとはイコール品質。「壊れない」という均質な品質の高さこそを重視します。けれど欧米人は違います。バング・アンド・オルフセンの製品はデザイン性を重視するため製品内の構造、配線が複雑になり、それが原因で故障が起きることもありました。しかし熱心なファンはそのことは問題にせず、そのデザインゆえの味わいを楽しむのです。同様に、ジャガー、プジョーといった欧州車を好む人々も、「壊れない」品質より、上質で味のあることを「クオリティーが高い」と評価するのです。

私の最初の配属先はグループ会社・松下通信工業(のちのパナソニックモバイルコミュニケーションズ)の電卓事業部です。当時は日本だけで電卓メーカーが46社もありました。その後、電卓ビジネスで生き残ったのはシャープとカシオ、キヤノンの3社だけです。では、なぜ3社は勝ち残ったのか。シャープは最初に液晶電卓を出した会社。とことん液晶にこだわり性能や技術を向上し、ついに液晶テレビにまで行き着きました。キヤノンは紙に印字する「プリンター電卓」を得意としていました。そこからプリント技術を磨き、複写機やファクスといった事業に発展・拡大していきました。カシオは量産技術が優れていました。電卓で培ったデジタル機器の技術を使って電子楽器、時計などにも商品展開していきました。つまり、デジタル機器の先駆けである電卓事業で液晶、プリンター、量産技術を極めた企業は勝ち残り、その技術を後の事業発展に役立てたのです。電卓戦争は、極めることの重要性を示す良いお手本になっていると思います。

大学卒業後に入社したのは松下電器産業(のちのパナソニック)です。松下に在籍した17年間は確実に私のビジネスライフの基盤となっています。私が松下に入社した時、創業者の松下幸之助は70代後半。現役の会長で入社式、配属式などでは登壇して話をしていました。私たちは幸之助の肉声を聞けた最後の世代と言えます。その影響は大きく、私は企業人として、また経営者として、幸之助の精神を常に心に留め実行してきたつもりです。中でも強く心に残っているのは幸之助が「松下電器が遵奉すべき精神」として掲げた「7精神」。「産業報国」「公明正大」「和親一致」「力闘向上」「礼節謙譲」「順応同化」「感謝報恩」です。毎日唱和するので社員は全員そらんじることかできました。入社直後は半信半疑だった新入社員も2~3年経つと「全くその通りだ」と共感するようになります。経営の根幹として定着した精神でした。

松下(パナソニック)の経営の仕組みで優れていたと思うのが事業部制です。あまり体が丈夫ではなかった幸之助が、拡大する松下の事業を滞りなく回せるよう、事業ごとに担当を決めて全面的に任せるようにしたのが事業部制の始まりです。事業部制と言えば米ゼネラル・エレクトリック(GE)が有名ですが、それより早く昭和初期に導入しています。事業部制の最大の特徴は独立採算制であること。数百人から数千人規模の組織で傘下に経理、人事、製造、技術、営業などの部門を抱えています。それらすべての責任を負う事業部長はいわば中小企業経営者のようなもの。経営者を育てるには最適の仕組みです。

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岡本和彦 ビジネスで必要なことは、松下幸之助から学んだ